HACHINOHE FUNERAL HALL

本州最北端の青森県八戸市に位置する葬祭場です。家族や近親者のみの小規模な葬儀の需要増に合わせて、地域に根ざした集会場的な役割も担う、親みやすくも静謐な空間が求められました。

配置形状は、京都の数寄屋造りの旅館に着想を受け、外周部を塀で取り囲んだ中に独自の世界観を宿す儀式のための諸室を分散配置し、それを繋ぐ回廊が廻る構成としました。日本の伝統的な素材や空間要素を各所に取り入れています。回廊の先には、参列者の慰めと安らぎの場となるよう光の注ぐ坪庭を配しています。

メインホール等の儀式のための空間は、迫り上がる屋根に沿って隆起していく曲面の天井がハイサイド窓まで続き、上方から注ぐ光の方へ視線も心も導かれ、旅立つ魂を受け入れる参列者の気持ちに寄り添うような空間となるよう配慮しました。

故人の亡骸との最後の別れは、旅立ちの儀室で行われます。暗室の中心にスポットライトを受ける棺が置かれ、その周りをランダムに配されたニッチに灯る蝋燭が照らすアルコーブが囲みます。荘厳な雰囲気の中、参列者は火葬へ向かう故人に最後の別れを告げます。

この施設を通じて、大切な人を失った参列者に、故人と最後に過ごすかけがえのない時間を届けられることを願っています。

所在地
青森県八戸市
用途
集会場 (葬祭場)
竣工年月
2021年7月
規模
地上1階
構造
木造
敷地面積
1173.64 ㎡
建築面積
492.30 ㎡
延床面積
492.30 ㎡
建物高さ
8.5 m
写真撮影
水上 五郎